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2024年09月04日
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【事例紹介】経理リショアリングBPO

Horizon One株式会社は、東急ファイナンスアンドアカウンティング株式会社(東急グループSSC(シェアード・サービス・センター))より受託した経理BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業務の運用を開始いたしました。本取り組みは、海外で実施していた経理BPO業務を日本国内に戻す取り組み(リショアリングBPO)です。本稿では、当取り組みに至った背景や、当社が重視するリショアリング成功に向けたポイントについてご紹介いたします。

1.リショアリングを実施した背景 ~オフショアBPOに内在する課題~

2000年代より選択肢として生まれていたオフショアでのBPOですが、直近BPOのリショアリング(国内回帰)を実施する事例が増えています。その背景として挙げられる主要なオフショアBPOの課題は次の通りです。

    人件費の上昇
例えば、オフショアBPOの代表的な拠点である中国・大連の人件費(非製造業)は直近の2021年~2023年でも毎年3.2%3.6%上昇しており(注1)、一人当たりの年間人件費(手当、賞与、事業主負担等を含めた総支給額)はスタッフクラス約285万円、マネージャークラス約500万円となっています。※
欧米企業での就業、日本語スキルの必要性等を踏まえると、その人件費は平均より相当程度に高いことと推察されます。大連BPOの人件費は日本の地方都市と比較して、大きな優位性はなくなりつつあります。
JETRO : 海外日系企業実態調査より引用

    地政学上のリスク
地政学上リスクを踏まえた経済安全保障の観点(業務の継続性、情報セキュリティ等)からも、海外での運用にはリスクが伴います。また、海外での運用は法制度や規制の変更に対する対応が困難で、予期せぬトラブルが発生した際の対応速度も国内での運用と比較すると低下してしまいます。さらに、データ保護を含むセキュリティ面の管理も、国内と比較した際、困難になります。

    残置業務への対応
オフショアBPOは大量の定型業務を低コスト運用することに主眼をおいています。そのため、次のような業務については従前と変わらず顧客社員が対応しているケースが多くあります。
①定型的であるが少量の多種多様な業務
②定型化可能であるが業務知識を要する業務
③可視化できるが日本の商習慣や各社固有ルールの理解を要する業務

また、オフショアBPOの品質確認や相談対応をするため、顧客社員がBPO業務に継続的に関与していることもあります。顧客の担当社員の業務量は部分的には削減されますが、残置業務対応のため、担当社員を他部門や他業務へシフトさせることもできず、人材の流動化が不足する事態に陥っている事例も散見されます。

 

2.リショアリングの成功に向けたポイント

リショアリングは業務を二か国間で移管するだけでなく、ベンダーtoベンダーで移管するという困難があります。マニュアルには表れ切れていない属人化した業務を、他ベンダーから引継ぐには大きなハードルがあることもまた事実です。本事例において、円滑なリショアリングの成功を実現するべく当社が特に重視したポイントは次の通りです。

    実務経験者100%の徹底

円滑な業務移管には、全運用メンバーを実務経験者で固めることが重要です。属人化・マニュアル未整備といった背景から、海外の前ベンダーから業務をそのまま引き継ぐだけでは、業務運用を開始できない可能性が高いです。不完全な状態で業務を引き継いでも、実務経験者100%であれば、業務知識でカバーが可能になります。また、定型業務の低コスト運用を基軸とするオフショアBPOでは対応ができなかった、専門性の高い業務についても、実務経験者100%であれば対応が可能です。

    体制の最適化による圧倒的コスト競争力の実現

オフショアBPOは、原則として社員はフルタイム勤務者かつ業務量のピークに合わせた配置人数である傾向にあり、加えて人件費の高騰によりコストメリットが創出しづらい環境になっています。そこで、当事例においては、繫忙期にのみ人員を多く配置する等、コストメリットを最大限に生み出す体制の構築に注力しました。これにより、リショアリングをしたことでかえってコストが増幅する、というケースの回避を目指しています。

    業務のブラックボックス化からの脱却

オフショアでは生み出せない利点を創出することもまた、リショアリングの取り組みを「成功」とするためのカギです。オフショアBPOにおいては、海外拠点で何をしているか実態がわからない、コスト構造が不明であり価格交渉が出来ない等、ブラックボックス化が大きな課題の一つとして挙げられています。当事例においては、リショアリングを機に、業務プロセス変更の共有、マニュアルの随時改定・共有、ツール導入状況の共有が可能な状態を整備し、契約期間終了時には顧客へ業務を返還できる状態を目指しています。

 

3.おわりに

リショアリングは顧客・BPOベンダー共に負荷のかかる取り組みであり、顧客のリソースや置かれている状況によって、必ずしも最善の選択肢ではないケースもあります。不確実性の高まる事業環境において、リショアリングがもたらすメリット・デメリットを精査したうえで意思決定を行うことが重要です。当社では、現在オフショアでのBPO実施をされている企業様に対し、リショアリング(国内回帰)の必要性を共に検討する1時間の無料コンサルティングセッションを提供しています。日本で実施した際のコスト面でのメリット/デメリットや、貴社の体制/状況を踏まえたリショアリングの実現可能性等、貴社のご判断に必要な材料を当社コンサルタントがご提供します。まずはご気軽にお問い合わせください。

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