■営業社員の事務作業を削減することが急務
多くの企業において、営業社員は見積書の作成や契約手続きといった営業事務作業に多くの時間を割かれています。こうした業務は、営業活動における最終的な成果とは直結しない一方で、対応の遅れが顧客満足度の低下や受注機会の損失につながることもあり、確実かつ迅速な処理が求められます。また、業務の属人化や手順の不統一により、営業担当者の異動・退職のたびにノウハウが失われるリスクもあります。こうした背景から、営業の「攻め」に集中するために、間接業務の最適化・再構築が急務となっています。
バリューチェーン別 営業事務領域のBPO受託範囲
※以上のように営業活動の全フェーズにまたがって事務業務は存在しており、営業プロセス全体の効率を左右している
■事例紹介:営業社員を本来業務へと解放し、組織の「攻め」を支えるBPOの役割
某建設業では、営業部社員の業務時間のうち、実に4割強が間接業務、いわゆる営業事務業務に投下されていました。その内訳を見ると、見積作成や受発注業務、入金管理など、本来であれば営業が手を動かさなくても済む業務が多数を占めていました。
こうした業務は、一つひとつの対応に時間がかかるだけでなく、営業拠点ごとに運用方法が異なることで属人化しやすく、引継ぎや教育の障壁ともなっていました。
実際のご支援では、まず各拠点における業務の実態を丁寧に可視化し、全体の中からBPO化が可能な業務を選定。全国の営業組織約150名を対象に、「営業の生産性を下げないこと」「安心して手放せる仕組みであること」を重視しながら支援を開始しました。
この企業様で実施した営業事務BPOは数多くありますが、大所である受発注業務のBPO化の流れをご紹介します。この受発注業務は支社・営業所間で手順のばらつきが大きく、属人的に処理されるケースも多いため、BPO化のハードルが高い領域と見られていました。さらに、既存のやり方では営業部社員と施工部門社員のコミュニケーションで完結していましたが、BPO化したといっても施主との関係構築・やり取りは営業部社員が行う必要があります。そのため、弊社スタッフ・営業部社員・施工部門社員の三者がタイムリーにコミュニケーションを取れ、かつ全社標準的な手順を構築できるという全体最適の実現に向けて以下のステップでアプローチしました。
① 本社営業部の号令の下、BPO化のモデルとなる支社を一つ選定
② 弊社の業務コンサルタントが率いる業務設計チームを構築。弊社の実務チームに加え、本社営業部とモデル支社を交えて業務設計を行います。
③ DXツールを導入し、各案件に携わる各社員と弊社スタッフが見積・契約締結などの情報を同時に閲覧、コミュニケーションを取ることができ、見積書等承認のワークフロー機能まで持たせたプラットフォームを構築。 BPOスタッフという関係者が増えたものの、従来と比較しコミュニケーション・承認のLTの短縮を実現
④ 営業部社員の感覚値で実施していた俗人化部分もすべて洗い出し、スタンダード・マニュアルを整備し、業務のテスト運用とそれに基づくマニュアル精緻化を実施
⑤ 精緻化が進んだところで他支社・営業所へのヒアリングを実施し、スタンダード・マニュアルとの差異を洗い出す
⑥ スタンダード・マニュアルに合わせた運用への変更可否を検討し、変更できない場合は特別ルールとして別途全支社・営業所用の一覧表へ記載することで全体最適を構築
⑦ 各支社・営業所への説明会を繰り返し実施し、営業部社員の実務面の不安を払拭しつつ運用へ導く
このように全社統一手順方法を一つ軸として構築したうえ、営業事務専門チームで業務を実施するため、業務の質と生産性が向上。今までは実施していなかったツールの導入・ルールも見直す業務改革を実現しました。さらに、以下のような統計調査への回答や中元歳暮の取り纏めなどの多品種少量の事務作業もBPO化による残置業務のゼロ化を図り、営業部社員は本来の営業活動に専念できる時間が増えたため、今後の受注率の向上が期待されます。
また、上述の業務のBPO化と業務改革に加え、日々の生産性の定量分析をもとにした要員配置と多能工化により、BPO開始から一年半で約21%の業務削減も実現しました。
BPOによる業務削減(イメージ)
まとめ
営業事務BPOの導入は、営業社員の余力を創出し、本来の営業活動に注力できる環境を整えるための有効な手段です。Horizon Oneでは、営業事務の専門チームが業務を担当し、企業の営業力を向上させるお手伝いをしています。ご興味がおありでしたらぜひ一度ご相談ください。